MZU-9D 技術仕様書
– MZU-9型 精神情報抽出ユニット:Decedent-Type(死亡者用)
分類:CIRO精神情報管理局 / 精神資源解析課管理下
機密区分:国家技術限定(Level-5-R)
1. 概要
MZU-9D(Mnemonic Zero Unit Type-9 / Decedent-Type)は、死亡済の対象者における脳神経構造を解析し、残存する記憶痕跡・判断傾向・感情記録を推定的に再構築する専門ユニットです。
生前の人格と主観を擬似的に復元し、ニーモ(MNEMO)として可視化します。
※ 本プロセスは、倫理審査を経た事件性・公益性の高い死亡例に限り実施可能
2. 装置構成と外観特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 外形寸法 | 高さ1.9m × 幅2.2m × 奥行1.8m(頭部固定ユニット) |
| 外観構造 | アーム式球体保持機構(Skull Cradle System) |
| 使用姿勢 | 頭部のみ固定・胴体不問(搬送体依存) |
| 表面材質 | 鋼製多軸マニピュレーター + 磁場干渉防止構造 |
| 付帯装備 | ・冷却コイル群(脳組織温度安定化) |
| ・ナノトレーサー循環管(発火痕の増幅可視化) | |
| ・光学ニューロスキャナー(精度0.03mm) |
3. 前処理と適用条件
1. 死後12時間以内に脳の冷温保存処置(−20〜−40℃)
2. 頭部に外傷・腐敗・脳幹破壊がないこと
3. ナノトレーサー(記憶痕強調用染料)の注入完了
4. 公的記録による事前同意またはCIRO長官の特例認可
4. スキャン手順と出力プロセス
| フェーズ | 内容 |
|---|---|
| 初期ステージ | 3軸固定 → 脳内残存経路の光学スキャン開始 |
| 誘導補完段階 | AIが既知症例との経路類似性を照合 |
| 感情傾向補正 | 感情・判断パターンをアルゴリズム補完 |
| 構造出力 | 擬似的な「ページ情報」が生成され、ニーモ化 |
| 最終処理 | 不完全領域に“曖昧タグ”を付与し封印候補とする |
5. 技術的特性
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| 精度 | 中〜高(構造保存率とトレーサー浸透性に依存) |
| 主観性 | 低め(AI補完により“客観化傾向”が強い) |
| 統合度 | 記憶断片を繋ぎ合わせるため、連続性に乏しいケースあり |
| 特徴 | 死直前の加速度的記憶再生(Flashback Bloom)が高精度で記録される傾向あり |
| 改竄検出 | 外部干渉が検出された記憶は閲覧不能領域(Sealed Block)として隔離処理される |
6. 倫理規定と運用制限
本装置は記憶の抽出・解析のみに限定されており、脳構造への修復・強化処理は禁止(法規制第20条)
出力された記憶が対象の名誉・尊厳を損なう恐れがある場合、一部封印または限定開示
遺族による閲覧拒否/削除要請があった場合、ECM(倫理コンプライアンスモニター)との協議の上、対応可否を判断
死後記憶は“真実”ではなく、“死者の主観的視界の再構成”であることを前提に解釈されなければならない
7. オペレーターへの留意事項
記憶内に“呼びかけ”や“擬似対話構造”が出現することがある。(共振干渉による幻聴現象)
記憶の“空白”に直面した場合、解釈せず、構造として記録することが原則。
強い怨恨・被害意識に基づく記憶は、情動干渉値(EPI)が高く、モニターを通じてもオペレーターに影響を及ぼす場合あり。