死亡者に対する MNEMOSYS 記憶取得プロセス
– Postmortem Reconstruction Protocol – 発行元:CIRO精神情報管理局・認識技術運用課
1. 概要
本手法は、死亡後に残存する脳神経ネットワーク上の発火痕・伝達経路などの物理構造を解析し、記憶・感情・判断傾向を推定再構築するプロセスです。
通称:神経構造復元型取得法(Postmortem Reconstruction Method)
国家指定装置「MZU-9D(Decedent-Type)」を用い、死後の脳組織から構造的にニーモを再生成します。
2. 法的運用原則
死亡者の記憶は公共性・公益性が確認された場合に限り、CIRO精神情報管理局によって取得される
原則として脳神経構造への改変・刺激処理は禁止されており、非改変型抽出のみが日本国内で合法とされる
本プロトコルは、個人の尊厳および遺族の精神的利益に配慮して運用される
3. 適用対象
| 適用事例 | 対象者の例 |
|---|---|
| 真相不明の死亡事案 | 自殺・事故・他殺など、明確な判断が困難なケース |
| 公務関連死 | 業務中に死亡した職員や関係者 |
| 精神医療関連死 | 精神疾患治療下での死亡(誤処方等の検証) |
| 登録記憶の保持者 | 生前に記憶取得の意思表示を行った者 |
| 記録不明死体 | 未登録かつ所持物・証言なしの死亡個体(“記憶なき遺体”) |
4. プロセス手順
Step 1:脳保存と緊急措置
死亡確認後12時間以内に脳組織を低温処理(−20~−40℃)
微細血管にナノトレーサーを注入し、記憶痕の可視化を図る
対象の頭部損傷が軽微であることが適用条件
Step 2:倫理審査と承認
生前登録がある場合:自動発動(登録者プロトコル)
登録がない場合:CIRO長官による特例承認 または法的代理人の同意
公的利用には、事件調査・政策決定など公益性の明示が必要
Step 3:MZU-9Dによる神経解析
多軸レーザーによる立体スキャンで神経経路と発火痕を再構成
感情・印象データは補正AIによって類推的に補完
複数候補の記憶断片からもっとも整合性の高い構造を採用
Step 4:ニーモ生成
出力された記憶空間には曖昧領域・断絶・誤認タグが付与される
死の直前に発生する「加速度的記憶再生」現象が記録されることもある
一般に、階層Lv7以降は不完全構造が多く、慎重な解釈が求められる
5. 技術仕様と注意点
| 特性 | 内容 |
|---|---|
| 精度 | 中~高。脳組織の保存状態に強く依存 |
| 主観性 | 低。補完処理により客観傾向が強い |
| 信頼性 | 解析率:約74%(平均)。特異事例を除く |
| 倫理性 | 非常に高い配慮が求められる(尊厳保持) |
| 外部干渉 | 不正改変の兆候が検出された場合は即時封印処理 |
6. 情報保全とアクセス権
出力されたニーモはK-Sig(記憶鍵署名)により暗号化。
死亡者の遺族または法定代理人による削除請求が可能。
民間事案の保存期間は5年、以降は自動消去対象。
閲覧申請・出力処理は検心官階級:第五等級以上に限定される。
7. 検心官の立場と留意点
対象者が存在しないため、精神情報にしか存在しない人格との対話となる。
記憶の断絶や誤認、想起の歪みはしばしば発生し、過剰な補完・共感のリスクがある
「語られなかった記憶」や「隠された痕跡」に向き合う姿勢が求められる。